日本へ留学ビザ申請と全体像

日本の学校(日本語学校・専門学校・大学・大学院 など)で、90日を超えて継続して勉強する場合には、原則として在留資格「留学」が必要になります。いわゆる「留学ビザ」という言い方をしますが、正確には在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility:COE)を取得し、その後、母国の日本大使館・総領事館でビザ発給を受けるという二段階の手続きになります。

この記事では、「これから日本に留学を考えている方」「学校からCOE申請の書類準備を依頼された方」を対象に、留学ビザ申請の流れ・必要書類・スケジュール感・よくある質問をできるだけ具体的に整理していきます。特に、大学・大学院への正規留学を検討している方や、社会人経験を経て日本に留学される方にとってもイメージしやすい内容になるよう心がけています。

目次

0.まず押さえておきたいポイント(要約)

  • 日本で90日を超えて学ぶ場合は、原則「留学」在留資格が必要
  • 多くのケースでは、まずCOE(在留資格認定証明書)の交付を受け、その後大使館でビザ申請を行う二段階方式
  • 書類は「学校側が用意するもの」と「本人・家族が用意するもの」に分かれる
  • 審査では、学習目的の明確さとともに、「日本で生活していけるだけの資金」があるかが重要なポイント
  • 最近は大学・大学院で、COE申請を本人または行政書士が行う形式も増えている

これらを前提に、以下で一つずつ詳しく見ていきます。

1.COEとビザの違いを簡単に整理

まず混同されやすいのが、「在留資格認定証明書(COE)」と「ビザ」の違いです。

  • 在留資格認定証明書(COE):日本に入国して在留する資格があるかどうかを、出入国在留管理局が事前に審査した結果を証明する書類
  • ビザ(査証):日本への入国を許可する「入国の許可証」のようなイメージで、大使館・総領事館が発給

多くの留学ケースでは、①日本の出入国在留管理局でCOEを取得 → ②COEを添付して母国の大使館・総領事館でビザ申請 → ③日本入国後、在留カードを受け取るという順番で手続きが進みます。

2.留学ビザ取得までの基本的な流れ

日本の留学ビザは、次のような流れで進んでいきます。

  1. 留学先の学校を選ぶ・出願(願書提出)
  2. 学校の入学選考(書類審査・面接など)
  3. 合格後、学校または本人・行政書士を通じて在留資格認定証明書(COE)申請
  4. 出入国在留管理局が審査(通常1〜3か月程度)
  5. COE交付後、母国の日本大使館・総領事館でビザ申請
  6. ビザ発給後、日本に入国し、空港で在留カードを受け取る

多くの場合、出入国在留管理局へのCOE申請は「学校を通じて」行われます。一方で、大学・大学院などによっては、学校側が必要書類の準備のみ行い、出入国在留管理局への申請そのものは本人または行政書士が行うパターンもあります。その場合、申請人ご自身と行政書士との役割分担を早めに確認しておくと安心です。

3.誰がどの書類を準備する?役割分担を整理

留学ビザの申請では、「学校側が準備する書類」と「申請人側・家族側が準備する書類」が明確に分かれます。まずは全体像を一覧で確認してみましょう。

区分主な書類準備する人
学校関係入学許可書、在留資格認定証明書交付申請書(学校作成分)、授業計画書、時間割、学校概要 など学校
本人の基礎情報パスポートコピー、写真、履歴書、最終学歴証明書、日本語学習歴証明 など申請人本人
資金・経費支弁預金残高証明書、収入証明書、在職証明書、送金予定に関する説明書 など申請人本人・経費支弁者
代理人関係申請取次行政書士への委任状、パスポート・在留カードのコピー など申請人本人+行政書士

文章として整理すると次のようになります。

  • 学校側が準備する書類:入学許可書、在留資格認定証明書交付申請書(学校作成分)、授業計画書、時間割、学校概要 など
  • 申請人本人が準備する書類:パスポートコピー、写真、履歴書、最終学歴証明書、日本語学習歴証明 など
  • 経費支弁者・家族が準備する書類:預金残高証明書、収入証明書、在職証明書、送金予定に関する説明書 など
  • 代理人関係書類:申請取次行政書士への委任状、パスポート・在留カードのコピー など

「どちらが何を用意するか」が曖昧なままだと、提出直前になって書類不足に気づくことがあります。最初の段階で、学校・本人・行政書士の役割分担を一覧化しておくことが、スムーズな申請の第一歩です。

4.本人が準備する主な書類(詳しく)

4-1.本人に関する書類

  • 有効なパスポートのコピー(身分事項ページ)
  • 顔写真(縦4cm×横3cmが一般的/最近3か月以内撮影・無帽・無背景)
  • 履歴書(学歴・職歴を日本語または英語で記載)
  • 最終学歴の卒業証明書・成績証明書
  • 日本語学習歴を証明する書類(日本語学校の修了証、JLPT合格証、オンライン講座の修了証明 など:必要な場合)
  • これまでの日本滞在歴がある場合は、その内容が分かる資料(過去の在留カードコピー等)

社会人の方が会社を退職して留学されるケースでは、「なぜこのタイミングで留学するのか」という学習目的・キャリアプランについて、簡単な説明書を添付すると、申請内容の一貫性が伝わりやすくなります。

4-2.日本での生活費に関する書類

日本での留学は、学費だけでなく生活費も含めると一定の費用がかかります。出入国在留管理局は、「本当に日本での学費・生活費を支払えるだけの資金があるか」を重視して審査します。

  • 預金残高証明書(本人または経費支弁者名義)
  • 経費支弁者の在職証明書・収入証明書
  • 所得証明書・納税証明書 など(国・地域によって名称が異なります)
  • 仕送り・送金の予定を説明する書面(誰が、どの口座から、どの頻度で送金するか等)
書類の種類目的・チェックされるポイント
預金残高証明書学費・生活費を支払えるだけの残高があるか、急な高額入金がないかなど、資金の安定性と継続性が確認されます。
在職証明書・収入証明書経費支弁者の職業・収入水準が、日本での留学を継続的に支援できるかどうかの判断材料になります。
所得証明書・納税証明書過去の収入実績・納税状況が、申告内容と矛盾していないか、過度な負債がないかなども含めて確認されます。
送金予定に関する説明書誰が、どのような方法で、どの頻度で日本に送金するのかを整理し、生活費の見通しを明確に示すための資料です。

必要金額は学校や学費、滞在予定期間などによって異なりますが、一般的には、最低でも1年分の学費+1年分の生活費に相当する残高を用意しておくのが望ましいとされています。生活費の目安については、学校の案内や各自治体のモデルケースなども参考になります。

また、直前に大きな金額が入金されている場合は、資金の出所を説明できるよう、送金記録や通帳コピーを準備しておくと安心です。

5.出入国在留管理局に提出する書類のイメージ

実際に出入国在留管理局に提出される申請書類一式は、次のような構成になることが一般的です。

  • 申請書:在留資格認定証明書交付申請書(留学)
  • 学校関係書類:入学許可書、授業計画書、時間割、学校概要 など
  • 本人・家族関係書類:履歴書、学歴証明、家族関係証明 など
  • 資金・経費支弁関係:預金残高証明、収入証明、在職証明、送金予定書 など
  • 代理人関係書類:行政書士への委任状、取り次ぎ届出済証明書のコピー など

実際には、国やご家族の状況、これまでの日本滞在歴などによって、必要書類が増減することがあります。例えば、過去に別の在留資格で日本に滞在していた方や、ご家族がすでに日本に住んでいる方などは、追加資料が求められることもあります。

6.申請のタイミングとスケジュール感

日本の多くの学校では、「4月入学」と「10月入学」が一般的です。それぞれの入学時期に対するCOE申請のスケジュールは、おおよそ次のようなイメージになります。

入学時期時期主な手続き内容
4月入学前年8〜10月学校への出願・選考(書類審査・面接など)
4月入学前年11〜12月合格決定、COE申請書類の準備
4月入学12〜1月出入国在留管理局へCOE申請
4月入学2〜3月COE交付・ビザ申請(大使館・総領事館)
4月入学4月日本入国・入学
10月入学2〜4月学校への出願・選考
10月入学5〜6月合格決定、COE申請書類の準備
10月入学6〜7月出入国在留管理局へCOE申請
10月入学8〜9月COE交付・ビザ申請
10月入学10月日本入国・入学

実際の締切日は学校ごとに異なりますので、「いつまでにどの書類を提出すべきか」を早めに確認しておくことがとても重要です。特に、海外から原本を取り寄せる必要がある書類(卒業証明書・家族関係証明書など)は、発行に時間がかかることがあります。

7.留学ビザ申請でよくある疑問・注意点

7-1.アルバイトはどのくらいできますか?

在留資格「留学」だけでは原則として就労はできませんが、「資格外活動許可」を受けることで、1週間につき28時間以内の範囲でアルバイトが認められます(長期休暇中は1日8時間までなどの特例あり)。ただし、学業に支障が出るほどのアルバイトは在留継続にも影響する可能性があるため、あくまで学業が中心というバランスが求められます。

7-2.資金の出どころはとても重要

預金残高証明書に大きな金額があったとしても、直前に急に大きな入金がされている場合などは、出入国在留管理局から「資金の出所」について説明を求められることがあります。可能であれば、時間をかけて計画的に資金を準備しておくことが望ましいです。

7-3.過去の日本滞在歴や在留状況もチェックされる

過去に日本での在留資格違反(不法就労、オーバーステイなど)があった場合や、出入国在留管理局からの問い合わせに適切に対応しなかった履歴がある場合、審査が厳しくなることがあります。心配な事情がある場合は、事前に専門家へ相談されることをおすすめします。

7-4.不許可になった場合はどうなりますか?

COE申請が不許可となった場合、その理由によっては再申請が可能なケースもあります。ただし、同じ内容で繰り返し申請しても結果が変わらないことが多いため、不許可理由を分析し、どの点を改善すべきかを整理したうえで再申請を検討することが大切です。

8.行政書士に依頼するメリット

最近は、学校がCOE申請を一括して行わず、必要書類の準備だけ学校が行い、出入国在留管理局への申請自体は本人または行政書士が行うという形も増えています。

そのような場合、申請取次行政書士に依頼すると、次のようなメリットがあります。

  • 提出前に書類一式をチェックし、不備や説明不足を補正できる
  • 申請人本人が出入国在留管理局に行かなくても、行政書士が代理で申請できる
  • 申請書の記載内容や経費支弁の説明など、審査のポイントを踏まえて整理できる
  • 結果が出るまでの間も、出入国在留管理局からの照会に専門的に対応できる
  • 不許可となった場合にも、理由の分析や今後の対応方針について専門的なアドバイスが受けられる

9.当事務所にご相談いただく場合の流れ(例)

当事務所では、大学・大学院への進学を含む留学ビザ申請について、次のような流れでご相談を承っています。

  1. お問い合わせフォーム・メール等からのご相談
  2. メールまたはオンライン面談によるヒアリング(ご希望の学校・入学時期・ご経歴・資金計画など)
  3. 想定されるリスクや必要書類のご案内・お見積書の提示
  4. ご依頼後、書類のチェック・補正、申請書類一式の作成
  5. 出入国在留管理局への申請取次・結果のフォロー
  6. COE交付後、大使館でのビザ申請に関する注意点のご案内

ご自身で申請される場合と比べ、書類の抜け漏れや説明不足によるリスクを下げつつ、申請人のご事情に合わせた形で書類を整えていくことを大切にしています。

まとめ:早めの準備と正確な書類作成が、留学ビザ成功の鍵

日本への留学ビザ申請は、「学校選び」「学費・生活費の準備」「書類の作成・翻訳」「出入国在留管理局への申請」と、多くのステップを伴います。

とくに、

  • 生活費・学費の資金計画とその証明
  • 学歴・日本語学習歴の整理
  • 学校側の書類と本人側の書類の役割分担

をきちんと押さえておくことで、申請全体がスムーズに進みやすくなります。

「自分のケースでどの書類が必要なのか知りたい」「大学院の留学ビザで専門家に一度相談したい」という方は、申請のタイミングを逃さないよう、早めに専門家へご相談ください。

お問い合わせ・アクセス

堀内行政書士事務所(東京・新宿)
担当:行政書士 堀内友起子
所属:東京都行政書士会 新宿支部
東京出入国在留管理局 申請取次行政書士
一般社団法人 外国人雇用支援機構(FESO)会員

▶ 事務所紹介ページを見る

アクセス:
東京メトロ副都心線「東新宿駅」徒歩5分
JR山手線「新大久保駅」徒歩8分
JR中央・総武線「大久保駅」徒歩12分

※本記事は公表資料に基づく一般的な解説です。個別案件では要件・必要書類が異なる場合があります。最新の運用や詳細は必ず公的機関・専門家へご確認ください。

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