外国人登録原票の開示請求|帰化や身分確認で「昔の在留記録」が必要な方へ
「昔、日本で外国人登録をしていたけれど、カードも在留資格の記録も残っていない。だけど帰化・永住・相続・婚姻手続きで過去の在留歴を証明したい」──こうした相談は実務でよくあります。
本記事では、旧「外国人登録法」に基づく外国人登録原票を、本人・家族・代理人が法務省に開示請求して取り寄せる方法を、行政書士の立場からできるだけ具体的にご説明します。
外国人登録原票の写しは、現在の住民票や在留カードでは確認できない「過去の在留資格」「最初に日本へ来た日」「本国での身分事項」などを証明する唯一の資料になることがあります。特に帰化申請や死亡後の相続・国籍確認では重要な資料です。この記事を読めば、誰が・いつ・どこに・何を出せばよいのかが整理できます。
この記事のポイント
- 外国人登録原票は、旧・外国人登録法に基づき市区町村で管理されていた登録記録で、現在は法務省が保管しており、本人や一定の親族等が「開示請求」で写しの交付を求めることができます。
 - 請求には、本人確認資料や、亡くなった方の場合は戸籍・除籍の写しなど「関係性を証明する資料」が必要です。資料が不足すると法務省から補正(追加資料の提出)を求められることがあります。
 - 原票開示は、帰化申請・永住許可申請・在留資格の立証・婚姻手続・相続関係の確認などに役立ちますが、記録が保存期間経過等により残っていないケースもあるので、早めに取り寄せるのが安全です。
 
外国人登録原票は
まず、「住民票を取れば昔の在留資格や登録内容が全部わかるのでは?」という誤解がとても多いです。現在の住民票や在留カード番号の記載事項は、基本的に現在の氏名・国籍・在留資格・在留期間などの「現在有効な情報」に限られます。
一方で、帰化申請・国籍確認・婚姻手続・老齢年金・相続手続などでは「日本に初めて来日した日」や「当時どの在留資格で滞在していたか」「婚姻・離婚・本国の登録名義」など、過去の履歴が重要になることがあります。
この過去情報は、現在の住民票等には通常残っていません。そこで使われるのが「外国人登録原票の写し」です。以前は各市区町村が管理していた外国人登録原票(旧・外国人登録法に基づく台帳)ですが、制度廃止後は法務省に移管され、本人または一定の関係者が開示請求という形で閲覧・写しの交付を求めることができます。
もう一つの誤解が「今は在留カード制度だから昔の登録情報はもう取れない」というものです。原票は永遠に残るわけではありませんが、一定期間は保管されており、現時点でも取得できる事例はあります。つまり「どうせ無い」と決めつけず、まずは請求を検討すべき資料です。
法令・審査観点
外国人登録原票は、かつての「外国人登録法」に基づき、在留外国人が市区町村に届け出た身分事項・居住地・在留資格などの記録です。2012年7月9日に新しい在留管理制度(出入国管理及び難民認定法に基づく在留カード制度・住民基本台帳への記録)が導入され、旧制度(外国人登録法)は廃止されました。これに伴い、登録原票は市区町村ではなく国(法務省)で集中管理されるようになっています。
この「原票の開示」は、個人情報保護の観点から、原則として本人による請求、または法務省が「正当な利害関係がある」と判断する者(例:相続人、配偶者、法定代理人など)に限定されています。審査では、①請求者と登録本人の同一性・関係性、②利用目的の正当性、③記録の現存状況が確認されます。
つまり、単に「知りたいから見せてください」ではなく、「帰化申請の準備のため」「亡父の国籍確認のため」など、具体的な目的を明記する必要があります。
影響範囲
外国人登録原票の開示請求が問題になる典型的な場面は大きく2つあります。ひとつは、本人が自分の過去の在留歴を確認したいケース(例:帰化申請・永住許可申請・在留資格変更に伴う過去在留証明など)。もうひとつは、すでに亡くなっている方の情報を、遺族が相続や国籍関係で確認したいケース是
特に後者では、遺産分割や国籍・身分関係の証明で「日本でどの氏名を名乗っていたか」「婚姻歴がどう記録されているか」が重要になることがあります。開示が認められれば、役所の戸籍・除籍とつなげて経歴を説明できるため、相続や出入国在留記録の整理がスムーズになることがあります。
一方、開示がむずかしいのは、請求者と対象者の関係が薄い場合(例:昔の同僚など)や、目的が曖昧な場合です。また、記録の保存期間を過ぎてすでに廃棄されている場合もあります。ですので、特に「亡くなった親の情報を取りたい」という場合は、相続・国籍・戸籍調査など明確な目的を文章化し、証明資料も一緒に用意することが重要です。
解決策
基本方針
外国人登録原票の開示請求は、「何のために必要か」「誰の記録が必要か」「請求できる立場にあるか」を最初に整理するとスムーズです。実務的には次のような整理を行います。
①帰化・永住など本人の手続き → 本人名義で請求する(本人確認書類を添付)。
②相続・戸籍整理など死亡者に関する手続き → 相続人や配偶者など利害関係人として請求する(死亡の事実と親族関係がわかる戸籍・除籍謄本等を添付)。
③本人が高齢・病気で動けない → 正当な代理権限を示す委任状+代理人側の身分証明で請求する。
ポイントは、「法務省が『正当な利害関係がある』と判断できるだけの根拠書類を最初から揃えること」です。これをきちんと準備しないと、追加資料の提出を求められ、結果的に時間も手間も増えます。
実務ステップ
- 手順1:要件確認→証拠収集→整合性チェック
まず、対象となる外国人登録原票(本人・親族など)の氏名(漢字/ローマ字/旧姓を含む)、生年月日、当時の在留資格や在留期間など、特定に役立つ情報をできるだけメモします。氏名が複数バリエーションある場合(旧姓、通称名、カタカナ表記など)はすべて書き出すべきです。
同時に、請求目的(帰化準備・相続手続など)を明文化し、本人確認書類・戸籍・除籍・婚姻関係を示す資料を揃えます。 - 手順2:書類作成→申請→補正対応→結果通知
法務省あての開示請求書を作成し、必要書類のコピー(原則として有効期限内の身分証・戸籍等)を添付して提出します。提出方法は郵送が基本になることが多いです。法務省側で審査が行われ、必要に応じて「この親族関係を示す資料を追加してください」「利用目的をもう少し具体的に説明してください」といった照会(補正依頼)が来ることがあります。ここで適切に回答できるよう、最初から関係資料を十分に揃えておくことが重要です。結果として、写しの交付または不開示(全部または一部)が通知されます。 - 手順3:想定問答・補足意見書の準備
「なぜこの情報があなたに必要ですか?」と問われたときに、回答が曖昧だと開示が認められないことがあります。たとえば「父が日本でどんな名前を使っていたかを知りたい」という表現よりも、「父が日本で使用していた氏名・在留資格・在留期間を確認し、相続関係説明図に記載するため。相続人として遺産分割協議書を作成する必要がある」というように、目的と使用場面を具体的に書くのが実務的には有効です。必要に応じて行政書士が補足意見書(趣旨説明書)を添付することもあります。 
よくある落とし穴
典型的なつまずきは次のとおりです。
・旧姓・通称名で登録していたのに、現在のパスポート名しか書いていないため、本人特定ができずに照会が長引く。
・「親族です」と主張はあるが、戸籍・除籍・出生証明など関係を示す資料が添付されていない。結果として利害関係の正当性が確認できない。
・目的が「とりあえず知りたい」だけになっている。→ 利用目的が曖昧だと、個人情報保護の観点から不開示となる可能性があります。
・登録原票の保存状況を過信してしまう。すでに廃棄されている(保存期間経過など)場合は、いくら正しい手順で請求しても「記録なし」という回答になります。この点は避けられないので、必要になった時点で早めに動くのが重要です。
つまるところ、「自分は請求できる立場か?」「何に使う書類か?」「その人を特定する材料は十分か?」の3点を明確にしてから提出するのが最短ルートです。
必要文件
ここでは、代表的な3つのパターン(本人請求/親族による請求/代理人による請求)を想定して整理します。どの場合も、提出先は法務省(所管部局)で、郵送請求が基本です。提出時にはコピーで足りますが、戸籍・除籍などは「最新のもの」や「全部事項証明」が求められることがあるため、古いものを使い回さないようにしましょう。
| 文件 | 目的 | 入手先/作成 | 重点 | 
|---|---|---|---|
| 開示請求書 | 誰のどの記録を何の目的で請求するかを明記 | 法務省への提出用に自作(様式例あり) | 氏名の別名・旧姓・生年月日など特定情報を詳しく書く | 
| 本人確認書類 | 請求者が本人/正当な関係者であることの確認 | 在留カード・特別永住者証明書・パスポートなど | 有効期限内か、顔写真・生年月日が確認できるもの | 
| 戸籍謄本・除籍謄本等 | 死亡者の情報を取得する遺族等であることの証明 | 本籍地の市区町村 | 続柄がわかるものを提出。古い戸籍だけではつながらない場合は複数種が必要 | 
| 文件 | 目的 | 入手先/作成 | 重点 | 
|---|---|---|---|
| 委任状 | 代理人(行政書士など)が手続きをする権限の証明 | 本人(または相続人など利害関係人)が作成・署名 | 署名・押印・日付が欠けると無効扱いになることがある | 
| 利用目的説明書 | 情報を何に使うのかの具体的説明 | 任意様式可(行政書士が作成することも多い) | 「帰化申請の添付書類」「相続関係説明図の根拠」など具体的に | 
| 返信用封筒・切手 | 結果通知・写し交付の返送用 | 請求者で用意 | 住所・氏名を明確に記載。不備があると返送不能になる | 
- 原本提出が必要かコピー提出でよいかは案内に従います。一般的には身分証はコピーで可ですが、場合によって原本提示や公証翻訳が求められることがあります。
 - 在留カードやパスポートの氏名と、過去の登録名義(旧姓・通名)が異なる場合、そのつながりを示す資料(通称名使用に関する証明、婚姻証明など)を同封すると特定がスムーズです。
 - 日付・押印・署名の抜け漏れは一番多い不備です。委任状の日付が空欄のまま送られるケースは意外と多く、差し戻しの原因になります。
 
補足・注意点
死亡した方に関する開示請求では、「なぜ相続や国籍確認に必要なのか」を合理的に説明できないと、個人情報保護の観点から不開示になる場合があります。例えば「父の過去の在留歴をただ知りたい」という理由だけでは弱いことがあります。「父の財産分与のため、遺産分割協議書に父の在留状況を正確に記載する必要がある」「国籍取得(国籍留保・喪失確認)に関連して日本での在留資格・氏名を証明する必要がある」といった、法的・行政的な必要性を明記すると判断が通りやすい傾向があります。
また、法務省から「その方が本当に死亡しているか」「あなたが相続人であるか」を丁寧に確認されることがありますので、戸籍・除籍・出生証明のつながりが一本の線になるように準備しましょう。つながりが一部でも切れていると、追加請求(別の自治体での戸籍取得など)が必要になります。
手続きの流れ
外国人登録原票の開示請求は、基本的に「郵送による請求→法務省での審査→結果の送付」という流れです。オンライン申請は想定されていないことが多く、窓口に直接行っても即日交付という扱いは通常期待できません。したがって、あらかじめ必要書類を揃え、封筒でまとめて提出する準備型の手続きと考えてください。
- 要件確認 → 書類準備 → 申請 → 審査 → 結果
 
| 段階 | 担当 | 期間目安 | チェックポイント | 
|---|---|---|---|
| 要件確認 | 申請人/行政書士 | 1〜3日 | 対象者の特定情報(氏名・生年月日など)は十分か/請求目的は明確か | 
| 書類準備 | 申請人/勤務先/親族 | 3〜14日 | 戸籍・除籍・委任状など関係性資料はそろっているか/有効期限内か | 
| 申請・審査 | 申請人/法務省 | 数週間〜 | 追加照会にすぐ回答できるよう連絡先を明確にしておく | 
請求例
ケース① 帰化申請に向けて自分で請求したケース
背景:長年日本で働いてきた方が、日本国籍の取得(帰化申請)を予定していました。しかし昔のパスポートや在留資格の履歴が手元に残っていない状態でした。
対応:本人名義で外国人登録原票の開示請求を行い、氏名(旧表記を含む)、生年月日、旧在留資格、来日した初回日などを特定。あわせて現在の在留カードと住民票の写しも準備し、本人性を明らかにしました。
結果:法務省から原票の写しが交付され、過去の在留資格の経緯や居住歴が確認できました。これにより、帰化申請書類の「出入国・居住歴一覧」を正確に記載でき、追加説明の負担が減りました。
過去の情報を「思い出」で埋めようとすると後から修正が必要になることが多いのですが、原票の記録をベースにすれば、最初から整合性のとれた書類を提出できます。
ケース② 亡くなった親の情報を相続で使いたいが目的があいまいだったケース
背景:申請者は「亡くなった父が日本でどんな在留資格で暮らしていたかを知りたい」として、外国人登録原票の開示を求めました。ただし、相続に関する具体的な資料は同封していませんでした。
問題:法務省側から見ると、「純粋な興味」なのか「法的手続のために必要」なのかが判別できません。また、申請者と亡父の関係を裏付ける戸籍・出生証明の資料も不足していました。
影響:目的が曖昧で利害関係が確認できない場合、個人情報保護上の理由から開示が認められない、または大幅に黒塗りされた形での交付になる可能性があります。
相続の準備であることを明記し、「遺産分割協議書を作成するために父の正式な氏名と在留資格を特定する必要がある」と説明し、戸籍・除籍・出生証明で親子関係を示す書類を同封するべきでした。
ケース③ 高齢の本人の代わりに子どもが代理請求するケース
状況:高齢で日本語が十分でない方が、自身の永住許可申請や特別永住者証明書の切替等の手続きのため、昔の登録情報を確認したい場合があります。
対応:ご本人が署名した委任状と、本人確認書類の写し、そして代理人(子ども等)の身分証明書を添付して請求します。必要に応じて、代理の必要性(健康上の理由など)を簡潔に記載します。
点:委任状には日付・署名・目的・対象者が明確に書かれていることが重要です。「代理で取りたい」だけでは弱く、「永住許可の提出資料に使用する」などの具体性を入れると判断しやすくなります。
委任状が整っていれば、必ずしも本人が役所・法務省に直接行く必要はありません。高齢や体調不良で外出が難しいケースでは特に有効です。
FAQ
Q1. 「外国人登録原票」とは何ですか?いまの在留カードとどう違いますか?
外国人登録原票とは、旧「外国人登録法」に基づいて、市区町村が外国人住民ごとに作成・管理していた基本台帳のようなものです。氏名、生年月日、国籍・地域、在留資格、在留期間、住所履歴などが記録されています。現在の在留カード制度(入管法ベース)と住民基本台帳制度が導入された後は、管理主体が法務省に移り、本人や正当な利害関係者が「開示請求」という手続きで写しを取得する形になりました。いまの住民票や在留カードだけでは過去の履歴がわからない場合に補完資料として使われます。
Q2. 誰でも請求できますか?友人の分も取れますか?
いいえ。個人情報を含むため、原則として「本人」または「法務省が正当な利害関係を認める者」に限られます。利害関係には、相続人として遺産分割協議を行う、配偶者として身分関係を証明する、法定代理人として手続きを進める、といったケースが含まれます。単なる興味や第三者調査目的では、開示が認められない可能性が高いです。
Q3. どんな情報が取得できますか?すべてそのまま公開されますか?
基本的には、登録時点の氏名(通称名や旧姓の記録を含む場合あり)、生年月日、国籍・地域、在留資格・在留期間、住所履歴などが含まれます。ただし、個人情報保護の観点から、請求者と直接関係のない第三者の情報や、プライバシー性が高い部分は黒塗り(マスキング)されることがあります。また、保存期間経過などで記録自体が残っていない場合は「該当記録なし」という回答になることもあります。
Q4. 用意する書類で一番つまずくのはどこですか?
一番多いのは「関係性を示す資料が不足している」ことです。たとえば亡くなった親の原票を取りたい場合、請求者とその親をつなぐ戸籍・除籍・出生証明などが揃っていないと、法務省側は「あなたは本当に相続人ですか?本当にこの記録を見る必要がありますか?」を判断できません。あらかじめ親子関係・配偶者関係・相続関係が一本の線になるように、複数の戸籍・除籍や翻訳つき出生証明等をまとめて提出することが重要です。
Q5. どのタイミングで請求すべきですか?あとからでも間に合いますか?
「必要だと思ったらすぐ請求する」が原則です。なぜなら、外国人登録原票は永遠に保管されるとは限らず、一定期間経過後は廃棄されている可能性があるからです。特に、何十年も前に在留していた方や、すでに亡くなっている方の情報は、時間が経つほど取得できないリスクが高まります。帰化申請・永住許可申請・相続手続など、今後公式な手続きに使う予定があるなら、先に原票の有無だけでも確認しておくことをおすすめします。
参考法令・出典
摘要
外国人登録原票は、現在の住民票や在留カードではわからない「過去の在留履歴」「日本で使っていた氏名」「初回来日の状況」を確認できる、非常に重要な記録です。帰化・永住・在留資格変更の準備をしているご本人はもちろん、亡くなった親族の相続や身分関係の確認をするご家族にとっても、早めの入手が後のトラブル回避につながります。
手続き自体は郵送中心で進みますが、関係性や目的を明確に示す資料の準備がカギになります。「自分の場合は取れるのか?」という段階でも相談できますので、迷ったらいったん専門家に状況を共有してください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、最終判断は最新の法令に基づき専門家へご確認ください。
